CITY POPの源流~加藤和彦

1947年3月21日、京都市出身。2009年10月16日、62歳で死去。
1967年、ザ・フォーク・クルセダーズでプロデビューを果たす。1年間限定の活動後に解散。1972年、福井ミカをヴォーカルにサディスティック・ミカ・バンドを結成。海外で高く評価され、1975年にはロキシー・ミュージックの全英ツアーでフロント・アクトを務めた。彼の代表的なソロ作品群“ヨーロッパ三部作”は、79年の「パパ・ヘミングウェイ」がバハマとマイアミ、80年の「うたかたのオペラ」がベルリン、81年の「ベル・エキセントリック」がパリでのレコーディングだった。「世界を旅しながらアルバムを作る」、そんな前例のないスタイルは羨望の的だったのと共に、「後ろは振り返らない。同じことはしない」という彼のモットーを地で行くものだった。

サイクリング・ブギ/サディスティック・ミカ・バンド

作詞:つのだ☆ひろ/作曲:加藤和彦/編曲:加藤和彦、サディスティック・ミカ・バンド

1972年6月リリース、サディスティック・ミカ・バンドのデビュー・シングル。加藤和彦がグラム・ロックの影響を受け1971年11月に結成したバンド。このシングル曲のレコーディング時のメンバーは、加藤和彦、加藤ミカ、つのだ☆ひろ。1973年5月には1stアルバム『SADISTIC MIKA BAND』がリリースされたが、この時のメンバーは、加藤和彦、加藤ミカ、高中正義、高橋幸宏、小原礼。「サイクリング・ブギ」はアルバムには収録されなかった(CD化された時に収録された)が、当時のLPには別ヴァージョンが入ったボーナスEPが付属されていた。
 

タイムマシンにお願い/サディスティック・ミカ・バンド

作詞:松山猛/作曲:加藤和彦

1974年10月リリース、サディスティック・ミカ・バンドの3rdシングル。同年11月リリースの2ndアルバム『黒船』からの先行シングル。このアルバムは、プロデューサーにピンク・フロイドやロキシー・ミュージックを手掛けていたクリス・トーマスを迎えて制作され、1975年にアメリカとイギリスでリリースされた。そして、10月には約3週間にわたるロキシー・ミュージックの全英ツアーのフロント・アクトを務めたがその直後に解散した。この曲の作詞は、ザ・フォーク・クルセダーズの『帰って来たヨッパライ』や「イムジン河」を手掛けた松山猛。ちなみに、1992年にシングルCD化された時のカップリングは「サイクリング・ブギ」だった。
 

シンガプーラ/加藤和彦

作詞:安井かずみ/作曲:加藤和彦/編曲:加藤和彦

1976年11月リリース、加藤和彦ソロ名義の5thシングル。同年12月にリリースされた3rdソロ・アルバム『それから先のことは…』にも収録された。サディスティック・ミカ・バンドの解散後に旅をしたシンガポールなど東南アジアにインスパイアされ制作された安井かずみとの初の共作アルバム。レコーディングはアラバマとフロリダ、ミックスダウンはロサンゼルスというこだわり。「シンガプーラ」は2003年8月リリースの杏子のシングルでカヴァーされた。
 

気分を出してもう一度/加藤和彦

作詞:安井かずみ/作曲:加藤和彦/編曲:加藤和彦

1978年2月リリース、4thソロ・アルバム『ガーディニア』から。ボサノヴァをはじめブラジル音楽に取り組んだアルバム。AORの第一人者マイケル・フランクスのサウンドにインスパイアされたと想像されるが、海外ミュージシャンを起用せずレコーディングは全て日本国内。坂本龍一、高橋幸宏、後藤次利、鈴木茂らに加え、笠井紀美子や村岡建、渡辺香津美、向井滋春などジャズ・フュージョン系のプレイヤーを多く起用している。この曲は、1977年に今野雄二&秋川リサやRajieらに提供した曲のセルフカヴァー。
 

スモール・キャフェ/加藤和彦

作詞:安井かずみ/作曲:加藤和彦/編曲:加藤和彦

1979年10月リリース、5thソロ・アルバム『パパ・ヘミングウェイ』から。加藤和彦が愛読していたアーネスト・ヘミングウェイの生涯をテーマにしたコンセプト・アルバム。80年代の他のCITY POPとは一線を画す、ヨーロッパ・テイストのロマンに溢れた仕上がりになっている。A面の1曲目に収録されていたヨーロッパ的なタンゴ「スモール・キャフェ」は、ヨーロッパ三部作を作るきっかけになった作品と本人が語っている。
 

メモリーズ/加藤和彦

作詞:安井かずみ/作曲:加藤和彦/編曲:加藤和彦

5thソロ・アルバム『パパ・ヘミングウェイ』から。レコーディングはヘミングウェイゆかりの地であるバハマのコンパス・ポイント・スタジオとマイアミのクライテリア・スタジオ。高橋幸宏、坂本龍一、小原礼、大村憲司らとバハマで合宿しながら制作され、そこにフロリダのミュージシャンによるHornとStringsが加わる。「メモリーズ」の印象的なSteelpanは、バハマに滞在していた時に出会った現地のミュージシャンの演奏だ。
 

アラウンド・ザ・ワールド/加藤和彦

作詞:安井かずみ/作曲:加藤和彦/編曲:加藤和彦

5thソロ・アルバム『パパ・ヘミングウェイ』から。一流ミュージシャンを従え、レゲエ、カリプソ、タンゴ、ニューウェイヴといった最先端のサウンド・アプローチを展開したアルバムは、年月を経ても色褪せない傑作として高く評価されている。「アラウンド・ザ・ワールド」は「ジョージタウン」とのカップリングで先行シングルとしてもリリースされた。レゲエのリズムを取り入れたことで最先端と目されたが、更にこの曲にはDub Versionが存在し1980年リリースのアルバム『うたかたのオペラ』の初回プレスにボーナスEPとして付属された。
 

ルムバ・アメリカン/加藤和彦

作詞:安井かずみ/作曲:加藤和彦/編曲:加藤和彦

1980年9月リリース、6thソロ・アルバム『うたかたのオペラ』から。ヨーロッパ三部作の2作目、1920年代のベルリンをテーマにヨーロッパの耽美的な世界を描いたアルバム。デヴィッド・ボウイやタンジェリン・ドリームらが使用していた西ベルリンのハンザ・スタジオでレコーディングされた。レコーディングには、細野晴臣、高橋幸宏、矢野顕子、大村憲司、岡田徹、清水信之、巻上公一、佐藤奈々子らが参加。ルンバやメレンゲの要素を取り込んだ「ルムバ・アメリカン」は、1980年11月にシングル・カットされた。
 

浮気なGigi/加藤和彦

作詞:安井かずみ/作曲:加藤和彦/編曲:加藤和彦

1981年7月リリース、7thソロ・アルバム『ベル・エキセントリック』から。ヨーロッパ三部作の3作目、1920年代のパリをテーマとしたアルバム。テーマに基づいた録音場所を選び、現地合宿しながら制作するスタイルを貫き、パリ郊外のシャトウ・スタジオでレコーディング。メンバーは、坂本龍一、細野晴臣、高橋幸宏、矢野顕子、大村憲司、清水信之。アルバムを通してエフェクトとシンセサイザーが多用されているのが特徴だが、テクノの無機質な感じではなくベル・エポックへの懐古的かつ退廃的な空気感が伝わってくる仕上がりの名盤。「浮気なGigi」は「ロスチャイルド夫人のスキャンダル」とのカップリングでアルバムと同時にシングルとしてもリリースされた。
 

優しい夜の過し方/加藤和彦

作詞:安井かずみ/作曲:加藤和彦/編曲:加藤和彦、清水信之

1983年9月リリース、8thソロ・アルバム『あの頃、マリー・ローランサン』から。バハマ、マイアミ、ベルリン、パリと海外レコーディングの“ヨーロッパ三部作”から2年、東京でレコーディングし東京で暮らすカップルを描いた東京発CITY POPの代表的な作品。清水信之と坂本龍一をアレンジャーに迎え、気品があってリラックスした雰囲気のサウンドと安井かずみの都会的な歌詞により絶妙な仕上がりになっている。「優しい夜の過し方」は、1983年8月に先行シングルとしてリリースされたAORナンバーだ。
 

Boys & Girls/サディスティック・ミカ・バンド

作詞:森雪之丞、小原礼/作曲:加藤和彦、高橋幸宏、小原礼/編曲:SADISTIC MICA BAND

1975年の解散後も、1985年6月に国立競技場で開催された音楽イベント「国際青年年記念 ALL TOGETHER NOW」にサディスティック・ユーミン・バンドとして出演。1989年には桐島かれんをゲストボーカリストに迎え再結成し4月にアルバム『天晴』をリリースした。先行シングル「Boys & Girls」はマツダ・ファミリアのCMソングに起用されオリコン13位を記録。桐島の英語ラップと高橋のソロ・ヴォーカルがクールだ。2006年には木村カエラを迎えて再々結成されている。
 

 

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