CITY POPの源流~鈴木茂

1951年12月20日、東京都世田谷区出身。
1968年、林立夫、小原礼とSKYEを結成。細野晴臣の誘いで69年はっぴいえんどの前身バンド、ヴァレンタイン・ブルーに参加。はっぴいえんど解散後、細野らとキャラメル・ママを結成、ティン・パン・アレーへと発展。並行してソロ活動もスタートさせ、75年に単身アメリカに渡り現地ミュージシャンを起用しレコーディングした初めてのソロ・アルバム『BAND WAGON』を発表、高い評価を得る。その後、ソフトロックやJAZZフュージョンのアルバムをリリースしている。
本稿では、1970~80年代での「CITY POPの源流」となる鈴木茂の作品をセレクションしている。

花いちもんめ/はっぴいえんど

作詞:松本隆/作曲:鈴木茂/編曲:鈴木茂、林立夫

1971年11月リリース、はっぴいえんどの2ndアルバム『風街ろまん』から。鈴木茂がはっぴいえんどで初めて作曲を担当したこの曲は、「古き良き東京・風街」というアルバム・コンセプトの雰囲気をうまく具現化している。71年12月には「夏なんです」とカップリングでシングル・カットされている。
 

ソバカスのある少女/ティン・パン・アレー

作詞:松本隆/作曲:鈴木茂/編曲:鈴木茂

1975年11月リリース、ティン・パン・アレーのアルバム『キャラメル・ママ』から。ボサノヴァ調のこの曲では鈴木茂のロックに留まらない音楽性の豊かさが表出し、1976年のアルバム『LAGOON』の世界に繋がっていく。この曲は鈴木茂と南佳孝のツイン・ボーカル、Stringsアレンジは松任谷正隆だ。1977年4月にシングルとしてリリースされた南佳孝のカヴァーはあまりにも有名。
 

微熱少年/鈴木茂

作詞:松本隆/作曲:鈴木茂/編曲:鈴木茂

1975年3月リリース、鈴木茂の1stソロアルバム『BAND WAGON』から。単身渡米しサンフランシスコとハリウッドでレコーディングした言わずと知れた名盤。名曲揃いのアルバムから、1975年当時は「八月の匂い」とインスト曲「スノー・エキスプレス」がカップリングでシングル・カットされたが、2017年4月には7inch シングルレコードとして発売された。
 

八月の匂い/鈴木茂

作詞:松本隆/作曲:鈴木茂/編曲:鈴木茂

1stソロアルバム『BAND WAGON』から。ベースがDoug Rauch(Santana)、ドラムスがDavid Garibaldi(Tower of Power)という強者リズム隊をバックに鈴木茂のスライド・ギターが心地よく、そこに絡むBill Payne(Little Feat)のピアノは聞きもの。
 
 

100ワットの恋人/鈴木茂&ハックルバック

作詞:松本隆/作曲:鈴木茂/編曲:鈴木茂&ハックルバック

1975年リリースのアルバム『幻のハックルバック』から。アルバム『BAND WAGON』収録曲をライブで再現するために結成されたバンド“ハックルバック”。 Key.佐藤博、Ba.田中章弘、Dr.林敏明と腕利きのメンバーだったが、活動期間が1年にも満たなかったこともあり、このアルバムが唯一のスタジオ録音盤。当初はカセットのみでリリースされたが1989年にCD化された。『BAND WAGON』ではファンキーなロックだった「100ワットの恋人」が、ラテン・フュージョン的なアレンジに仕上がっている。
 

砂の女/鈴木茂&ハックルバック

作詞:松本隆/作曲:鈴木茂/編曲:鈴木茂&ハックルバック

アルバム『幻のハックルバック』から。1975年11月に解散してしまったハックルバックだが、2008年7月にリリースされた『鈴木茂ヒストリー・ボックス』で13曲ものライブ音源を、2015年9月にはライブアルバム『1975 LIVE』を発表している。また、1999年、2016年、2019年にライブで再結成を果たしている。
洗練されたAORアレンジの「砂の女」でコーラスを務めているのはあの桑名正博。Key.佐藤博と命日が同じとはあまりにも奇遇。
 

LADY PINK PANTHER/鈴木茂

作詞:松本隆/作曲:鈴木茂/編曲:鈴木茂

1976年12月リリース、鈴木茂の2ndソロアルバム『LAGOON』から。前作と打って変わってボサノヴァやジャズの影響を感じるメロウなナンバーが並ぶアルバムだが、この曲はティン・パン・アレー時代の「ソバカスのある少女」流れを汲む続編とも言える。2017年4月には「8分音符の詩」とカップリングで7inchシングルレコードとして発売された。
 

Tokyo・ハーバー・ライン/鈴木茂

作詞:松本隆/作曲:鈴木茂/編曲:鈴木茂

2ndソロアルバム『LAGOON』から。ホノルルの名スタジオSOUND OF HAWAIIでレコーディングされたこのアルバムは、インスト2曲を含む洗練されたCITY POPが詰まっている。松本隆の書く歌詞もはっぴいえんど時代のノスタルジアから変りTOKYO CITYを意識した印象が強い。
 

レイニー・ステイション/鈴木茂

作詞:松本隆/作曲:鈴木茂/編曲:鈴木茂

1978年1月リリース、鈴木茂の3rdソロアルバム『Caution!』から。ギタリストにも拘らず、インスト曲を排しVo.とのバランスの為に敢えてGt.を弾き過ぎない、そんな印象が強いポップス・アルバム。映像が浮かんで来るような松本隆の歌詞とグルーヴィーなサウンドでお洒落なCITY POPに仕上がっているこの曲は、1978年2月に7inchシングルでもリリースされた。1989年には角松敏生がカヴァーしている。
 

サテン・ドール/鈴木茂

作詞:松本隆/作曲:鈴木茂/編曲:鈴木茂

3rdソロアルバム『Caution!』から。売れっ子アレンジャーとして多忙を極めていたこの時期に作り上げたアルバム。この頃から自らオーケストレーションをするようになったと語っていた通り、よりポップに磨きがかかった。その中でも耳を引くのはメロウなボサノヴァ。この曲のDr.は伝説のJAZZバンド「ザ・プレイヤーズ」の渡嘉敷祐一、A.Gt.は吉川忠英、Cho.はラジと垂涎ものだ。
 

ラハイナ・ガール/鈴木茂

作詞:松本隆/作曲:鈴木茂/編曲:鈴木茂

1978年11月リリース、鈴木茂の4thソロアルバム『TELESCOPE』から。ディスコ・サウンドからAOR、ブラジリアン・サンバまで当時の空気感あふれるポップスが詰まったアルバム。ホーンとコーラスを配しタイトなビートで聞かせるメロー・グルーヴ「ラハイナ・ガール」は白眉。絶妙なPianoは坂本龍一。
 

サンタモニカ・ラリー/鈴木茂

作詞:仲畑貴志/作曲:鈴木茂/編曲:鈴木茂、David Campbell

1979年9月リリース、鈴木茂の6thソロアルバム『COSMOS’51』から。StringsとHornのレコーディングとマスタリングはLA近郊のKendun Recorders。フュージョン・アルバムの前作『WHITE HEAT』とは打って変って、更に進化したポップス・アルバムに仕上がっている。「ソバカスのある少女」を始めに2nd、3rd、4th、6thと聞き進むと、鈴木茂がいかにボサノヴァやAORを敬愛しているのが分かる。この曲の作詞はコピーライターの仲畑貴志、StringsアレンジはDavid Campbellで乾いたAORナンバーだ。
 

 

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