CITY POPの源流~ティン・パン・アレー

1972年12月に「はっぴいえんど」を解散したばかりの細野晴臣、鈴木茂と、フォージョーハーフの林立夫、松任谷正隆によって1973年に結成されたバンド「キャラメル・ママ」。細野のソロ・アルバム『HOSONO HOUSE』の制作から活動をスタート。抜群の演奏力をもって幅広い層でバック・ミュージシャンとしての成功を収めた一方、バンドとしてのアルバム制作やライヴ活動は思い通りにならなかったようだ。
1974年7月「ティン・パン・アレー」に改名してセッション・ユニット志向を強め、1975年には鈴木茂が結成したハックルバックのメンバーだった佐藤博も参加。そして、1975年11月「ティン・パン・アレー」名義による念願のアルバム『キャラメル・ママ』を発表。彼らが生み出す音楽は、「ティン・パン系」と呼ばれCITY POPの源流となった。
しかし、「ティン・パン・アレー」は個々の活動が活発になり、パラダイス・ツアーの終了後の1976年夏にティン・パン・アレーの事務所は解散、バンドも自然消滅した。

月にてらされて/ティン・パン・アレー

作詞:荒井由実/作曲:松任谷正隆/編曲:松任谷正隆

1975年11月リリース、ティン・パン・アレーのアルバム『キャラメル・ママ』から。このアルバムは、メンバー4人がそれぞれのプロデュース作品を2曲ずつ持ち寄る形で構成されている。この曲のPerc.が斉藤ノブ、Cho.に山下達郎と大貫妙子、Cho.アレンジは山下達郎という豪華メンバー。1976年6月リリースのハイ・ファイ・セットのアルバム『Fashionable Lover』でカヴァーされている。
 

ソバカスのある少女/ティン・パン・アレー

作詞:松本隆/作曲:鈴木茂/編曲:鈴木茂

アルバム『キャラメル・ママ』から。この曲は、鈴木茂と南佳孝のツイン・ボーカル、Stringsアレンジは松任谷正隆。1977年4月にシングルとしてリリースされた南佳孝のカヴァーはあまりにも有名だが、他に、角松敏生(1989年1月NOBU CAINEのアルバム『NOBU CAINE』や2003年12月村上“ポンタ”秀一のアルバム『MY PLEASURE』にて)、MAMALAID RAG(2007年11月トリビュート・アルバム『SUNNY ROCK!』にて)にもカヴァーされている。
 

YELLOW MAGIC CARNIVAL/ティン・パン・アレー

作詞:細野晴臣/作曲:細野晴臣/編曲:細野晴臣

アルバム『キャラメル・ママ』から。この曲で細野晴臣は、Ba.Gt.に加えてSteelpanやXylophone(シロフォン)まで器用にこなしている。1979年、女性シンガーMANNA(マナ)は林立夫プロデュースのもとこの曲「YELLOW MAGIC CARNIVAL」でデビューしている。

 

恋は桃色/細野晴臣

作詞:細野晴臣/作曲:細野晴臣/編曲:細野晴臣

1973年5月リリース、細野晴臣の1st.ソロアルバム『HOSONO HOUSE』から。同年9月にシングル・カットされた。後に、中村一義、サニーデイ・サービス、矢野顕子、永野亮(APOGEE)、オカモトコウキ(OKAMOTO’S、ライブにて)らによってカヴァーされた名曲。2017年にはアナログEPで復刻された。
 

北京ダック/細野晴臣

作詞:細野晴臣/作曲:細野晴臣/編曲:細野晴臣

1975年6月リリース、細野晴臣の2ndソロアルバム『TROPICAL DANDY』から。翌年4月にシングル発売されたが別バージョン。この曲の独特なリズム“バイヨン”は、1950年代に世界的に流行したブラジルのダンス音楽のリズムで元々はブラジル北東部の民族音楽に由来するそうだ。また、歌詞では横浜中華街が舞台となっていて、当時リリース・ライブを中華街のレストラン「同發新館」で行っている。
 

砂の女/鈴木茂

作詞:松本隆/作曲:鈴木茂/編曲:鈴木茂

1975年3月リリース、鈴木茂の1stソロアルバム『BAND WAGON』から。ティン・パン・アレーとしての活動期に更なるバンドサウンドを求めて単身渡米。サンフランシスコとハリウッドで現地の凄腕ミュージシャンを起用してレコーディングした言わずと知れた名盤。名曲揃いのアルバムだが、2017年4月には「微熱少年」とカップリングで7inchシングルレコードとして発売された。
 

100ワットの恋人/鈴木茂

作詞:松本隆/作曲:鈴木茂/編曲:鈴木茂

1stソロアルバム『BAND WAGON』から。2014年5月、渋谷WWWで『HMV GET BACK SESSION Special 鈴木茂「BAND WAGON」LIVE』を開催し、アルバム『BAND WAGON』を曲順に再現してみせた。MCで「当時はレコ発ライブを出来なかったので、約40年振りでレコ発が出来た」と言って会場を沸かせた。この模様はDVDでリリースされている。
 

8分音符の詩/鈴木茂

作詞:松本隆/作曲:鈴木茂/編曲:鈴木茂

1976年12月リリース、鈴木茂の2ndソロアルバム『LAGOON』から。ハワイのホノルルでレコーディングされレイドバックした雰囲気が溢れるアルバムの中で、メロディ・メーカーぶりが光る佳曲。2017年4月には7inchシングルレコードとして発売された。デビュー前の竹内まりやが1978年『Loft Sessions Vol.1』の中でカヴァーしている。
 

荒涼/松任谷正隆

作詞:荒井由実/作曲:松任谷正隆/編曲:松任谷正隆

1977年11月リリース、松任谷正隆のソロアルバム『夜の旅人』から。ゲスト・ヴォーカルの大貫妙子がフィーチャーされている。この曲は2007年に大貫のアルバム『SUNSHOWER』の紙ジャケット仕様限定盤でのCD再発時に、ボーナス・トラックとして収録された。また、1976年6月、ハイ・ファイ・セットの2ndアルバム『ファッショナブル・ラヴァー』でカヴァー・ヴァージョンが収録されている。
 

Hong Kong Night Sight/松任谷正隆

作詞:荒井由実/作曲:松任谷正隆/編曲:松任谷正隆

ソロアルバム『夜の旅人』から。抑えの効いたヴォーカルで聴かせるこのAORナンバーは、2015年12月には「気づいたときは遅いもの」とカップリングで7inchシングルとしてリリースされた。また、1981年5月リリースの松任谷由実のアルバム(12inch EP)『水の中のASIAへ』でカヴァーされている。
 

夜の旅人/松任谷正隆

作詞:荒井由実/作曲:松任谷正隆/編曲:松任谷正隆

ソロアルバム『夜の旅人』から。唯一のソロアルバムにしてAORの名盤を締めくくるにふさわしいナンバー。アルバムは長らく廃盤となっていたが、2015年11月にはリマスタリングされBlu-spec CD2仕様で再発された。ちなみに、ジャケット画は松任谷由実が描いている。
 
 

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